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円茂竹縄ブログ

都条例改正案ポイントのPDFがひどい件について

わたしは彼らを誤解していました。
これから個人的に、表現の「規制推進派」ではなく、条例の「改正推進派」と呼ぼうと思います。意図はわかりませんが、推進派の中核は“たんに条例を改正したいだけである”ということが、今回発行されたPDFであらわになったのではないでしょうか。
これまで“表現とその影響”という点でしか考えていなかったので、今一つ自分が反対派だとはいい切れませんでしたが、別のところに意図があるのならば、以降は強く反対の立場に立とうと思います。

まずはPDFをご覧ください

東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案のポイント
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/pointo1.pdf
これはほんっっとにひどい。見れば見るほど、公的機関が出した文書と思えない。


まず、今回の改正案問題のおおもとは「条例案文の定義があまりにあいまいで、予想される解釈の幅が広すぎる」というところなわけですよ。
表現の自由言論の自由がこの国の根本にかかわる重要なことだったとして、いかようにも解釈できる文言の法は、あきらかにそれを阻害するわけです。反対派が口すっぱくいう、「あいまいすぎる」という指摘を拾ってくれないのなら、東京都は、表現の自由言論の自由を、とるにたらないものだ、と言っているのと同じなんです。
で、そこで、それは違う、というのを説明したのが今回のPDFなんですけれど、非常にわかりやすい。
まったく中身のない改正だということがよく理解できます。

どこがおかしいか

1ページ目下段にある図に注目してみます。これが、今回のポイントをもっとも端的にまとめたものだと思われるからです。今回の改正であたらしく成人指定されるものは「青少年との性交等を不当に賛美・誇張する漫画・アニメ等」ということになっています。しかし、その一方で、「性的感情を刺激するもの」は、すでに現行条例で指定されているのです。

なにがおかしいか

まず、「新しい定義」の大前提として、「これまでの定義と内容がカブらない」ということが挙げられると思います。でないと、定義する意味がないからです。「青少年との性交等を不当に賛美・誇張する漫画・アニメ等」は、「新しい定義」でしょうか?


新しい定義であれば、今回、指定の対象にくわえられるのは、「性的感情を刺激【しない】」かつ「青少年との性交等を不当に賛美・誇張する漫画・アニメ等」ということになります。 ………ちょっと考えていただきたい。なにその「麦の新ジャンル」みたいな作品。 該当しそうなシナリオを考えてみた。

●エンコー☆カフェ●
“大人によっていろいろなことを教えてもらえる”援助交際を是とし、ひろくそれを斡旋するカフェを主催している、幼なじみの男女5人組☆
ちょっと田舎町(?)のカフェを舞台にくりひろげられる、青春ストーリー!
青少年との性交シーンはいっさい出てこず、暗示されるだけなので、性的感情も刺激されずに安心!絵面もさわやかな少女マンガです!

ない。ないです。現実的にこのような作品がないであろうことが分かりますでしょうか?
もともと、今回の改正案は“青少年が悪影響をうけるので、性的に過激な表現は、かれらの目につくところから離しましょう”という趣旨だったはずです。そしてそれは“著しく性的感情を刺激する”という現行の文言で充分指定できるものであるはずです。


実際、PDF内の文脈でも表現がブレていて、「(今回新しく指定の対象になるものは)読者の性的好奇心を満足させることを目的として、不当にその行為を賛美し、誇張して描いたもの」とされていますが、「性的好奇心を満足させる」目的のものは、ふつう、性的描写を伴なうものですよね。イコール「性的感情を刺激する」ものであるはずです。
(※あとから、ひとつ該当しそうな作品群が思いあたりました。後述します。)


したがって、PDFの条例案文解釈をたとえると、
「かたちを取締ります。“三角形”“円”“四角”はありますが、“二等辺三角形”がないので加えます!」*1
といってるようなものなのです。私なんか変なこといってますかね???

「それだけのこと」が、実はこれだけ「中身がないこと」

今回のPDFは猪瀬副都知事のいう「それだけのこと」を具体的に説明したんでしょう。その「それだけのこと」に、これだけ中身がない、ということが、なぜ分からないのか??? 猪瀬副都知事のブログにある「近親相姦や強姦などを肯定的に繰り返すもの」は、現行条例の「性的感情を刺激する」の範囲内ではないでしょうか。
どうみても、現行条例・現行審査機関で充分、という結論しか出ません。


そして、現行で充分なのに、なぜ「改正」にこだわるの?という疑問にぶちあたる。 他に意図があるとしか思えません。

  1. 条例改正した、ということ自体を実績として喧伝したい、団体や個人がある。
  2. 今回の改正によって、誰かがなにかの得をする……新定義によって表現物流通になんら影響はないようですから、まあ市民以外の誰か・なにかなんでしょう。

この内容でもまだ、改正をおしすすめるというならば、これを支持する都知事・副都知事・都議会議員なども、にたような目的があるのかな…、と邪推されても仕方がないですよね。そして、私の書いたことが当たっているとしたら、こんな、シロウトでも気づくようなことに気づけない人達が、治める立場に立っているのは非常に残念です。気づかない、わけがないです。


石原都知事は3月末の時点で、条例改正案について“よく読み込んでいない”という旨の発言をなさっています。猪瀬副都知事も、よくご査収されてないんじゃないでしょうか?? お忙しいのはお察ししますが、今一度、改正案を精査していただきたく思います。
石原都知事も、猪瀬副都知事も、かつては“作家”さんであったはずです。言葉と、その影響のことを、ご存じないはずがありません。まして、法です。条例です。人間をもっとも強くしばりつけることができる表現=「法の文言」は、何をさしおいても吟味されるべきものではないでしょうか? 私は、かつて“作家”であったお二人を信じます。どうか、今回の改正そのものに妙な意図が隠されていないか、考えていただきたいです。
はっきりいって、こんな中身のない条例改正のために、貴重な都議会の時間を使わないでほしいくらいです。他に議論すべきことはたくさんあると思います。また、このような改正を議論するくらいなら、ちまたに出回っている作品を一つでも多く検討したほうが現実的ではないでしょうか。

改正推進派の方々へ

今回新しく指定される内容、「性的感情を刺激【しない】」かつ「青少年との性交等を不当に賛美・誇張する漫画・アニメ等」に、該当しそうな作品群がひとつだけ思いあたりました。
それは、ケータイ小説です。*2 あれは、思春期ならではの悩みや痛みを主題としたものが多いです。その流れで、“青少年が自分の性を軽く扱ってしまう”というプロットもよくあります。とらえかたによっては甘美であり、「性的感情を刺激するような描写は少ないながら、青少年との性交を不当に賛美・誇張している」と言えなくもありません。実際、ケータイ小説系の登場人物がかもしだす背徳に、あこがれてしまう中高生は多いのではないでしょうか。


しかし、ケータイ小説は、今回の条例改正会議の場で出てきた作品群とは、方向性が大きく異なるのではないですか? おそらく、会議に出られた方はあの作品群では性的感情は刺激されなかったんでしょう。しかし私ならば現行の「著しく性的感情を刺激する」という部分に収まると判断します。
このことだけでも、表現からうける感情や影響は人によってまったく異なる、ということがお分かりになりませんでしょうかね??
また、ご自分たちの話の内容がスカスカであることが、お分かりにならないでしょうか??
今さらあなたがたの気づくことなど、たいてい先人が先回りして定義されているようですよ。

追記-20100427

ITmediaさんでもニュースが出てたみたいで。「綾波レイのヌードはOK」――都が条例改正案のFAQ公開、「条文と違う」と指摘も - ITmedia ニュースの、最後の3行、ほんとにその通りです。藤本由香里さんの「限定表現は条文に存在しない」、山口貴士弁護士の「言い訳をだらだらとするのではなく、曖昧な条文を変えて下さい」、本当ーーーーにそのとおり。

追記2-20100427

いらつくわあ。このQ&APDFですけれど、15ページ目、「これまでの業界との共通了解を勝手に都が変更し、解釈を拡大することは、それこそが「行政の恣意的な運用」「規定の濫用」になると考えるからです」。だから、先に“業界との共通了解”のほうに打診しないのはなんでなの????

*1:伊藤 康祐さん『個独のブログ―ある法律学徒の英語と読書な日々』よりインスパイア。いい本なのでみんな読んでね。

*2:ねんのために書いとくと、ケータイ小説を取り締まるべき、と言っているのではありません。ああいったものまで青少年から取り上げるとするなら、本当に彼らの気持ちのわからないバカです。