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円茂竹縄ブログ

自炊代行のこと

「自炊」代行2社にスキャン差し止め要求 東野圭吾さんら作家が提訴 - ITmedia ニュース
上記のニュースについて、いま検索したらブログでも意見がたくさん記述されてるけど、あえて頭に入れないで(嘘、いくつか読んじゃったけど)素人がちんたら書いてみるよ。興味のある人はBLOGOSの特集とかもコンパクトに色々まとまってていいんじゃないでしょうかかか。
いろいろ考えたんだけど、結論から書くと、私は「スキャン代行業者」とか、制作されたデータには、やっぱり何らかの制限が必要なんじゃないかと思う。

  • 免許制?(古物商みたいな。。。)
  • 制作データに依頼者の個人情報またはスキャン代行業者の情報を埋め込む?
  • 他、制作されたデータについては徹底管理されるべきかと思う

ただ、出版業界や著作者と、スキャン代行業者には歩みよりようが充分あると思うんです。それは後述。

自炊と自炊代行

どうも、「自炊」と「自炊代行」をごっちゃにして語られてることって多い感じがする。
よく、「著者(著作権者)が、読者の書籍の使い道まで指定するべきじゃない」という意見をみることあるけど、それって当たり前だと思うんですよ。
「購入者」が「自ら、私的利用のために複製」するのは今問題になってないと思う。
それの「代行」がどうなの?って話で。「私的複製の代行」って、変な話な気もするし。

しかもそれを、(勿論のこと)お金をとってやっている、と。
それは「著作物から副次的に利益を得てますよね?」という言い方もできる。
古本屋なんかは先も書いたように免許制なはずで、台帳を書かなければいけない、という義務などがあるようです。自炊代行もそうした何らかの義務もなしに野放しにされるべきではないのでは?と思うんですね。
コピーが流通する可能性もあるわけだし。

スキャン代行が出てくるのと電子書籍のラインナップがないのは別問題か?

で、「でもさ、欲しい電子書籍のデータが売ってないんだから自炊するしかない、しかも大量だから代行してほしいニーズも当然あるでしょう。お客さん側からしてみたら、東野圭吾さんが仰るように『電子書籍展開と、スキャン代行の話は別問題』ではないのでは??」
と思ってたんですが、やっぱり別問題のような気がしてきた。
書籍 to 電子データ で考えるからごっちゃになるんで、データ to データ で考えれば分かりやすいのではないかしら。

たとえば今、私『スカイリム』というゲームにクソはまりしておるわけですが、これの曲データだけが欲しいと。
いつでも聴きたいと。スカイリムのデータが複製可能だったとして、
「私が買ったゲームなんだから、曲のデータだけ抜き出して返して! 忙しいから、お金払うからそれやって!」
って言ったら、皆たぶん、サントラ買えよ、って言うと思うんですよ。で、たとえサントラが売ってたとしても、
「持ってるデータから複製可能なんだから安く済ませたい! 自分で聴くだけなんだから関係ないでしょ!」
と言うかもしれない。

スキャン代行が手放しで許されるとなると、別にデータが売ってようがなかろうが複製は自由で、私のもとには売ってるサントラでない、もう一つのサントラを手渡すことになるわけです。これは、「サントラ販売で得られたはずの『スカイリム』の利益を、その一方で複製代行業者が利益を得ながら、侵害してる」と思う。おかしな例えじゃろか??

勿論、現実にはコピーガードかかってるだろうし、それを外した時点で違法なはずです。
紙の書籍にはコピーガードがかけられないから、これができてるだけだと思う。
そして実際、すでに紙書籍を持ってる人が新しく電子データを買うかというと、とくにこだわりがない限り、天秤にかけて安いほうを選ぶと思う。

じゃあ公式電子データをスキャン代行に負けないくらい安くすりゃいいじゃん!って話だけど、電子書籍を発行するにも人手はかかってるわけで、そうなるとスキャン代行の一冊100円より安くってのは難しい数字な気がする。どうだろ。

そろそろめんどくさくなってきたから結論に入りますが

「依頼者が権利を持ってないものの複製代行業は、やはり何らかの制限を設けるべきなんでは?」というのが私の最近の考えです。だから今回の訴訟も、現状、べつに見当外れではないと思う。
原告側のコメントが情緒的なものばかり取り沙汰されてるから、皆混乱しているような気がするけれども、複製が自由になることによって利益を侵害されるであろうこれからの若手を守ろうとしている、とも取れて、私なんかは感謝しなくちゃならない感じかもしれない。

噂程度ですが、「韓国のマンガ業界は違法コピーで壊滅したのだ」とも聞いたことあります。
先のスカイリムの例えだって、実際、リリース後どのくらい売れるかってわからないわけだし、制作中はある意味バクチなわけですよ。でも頑張って作りこんで、後から元取ろう、いいものだから皆買ってくれるはず、サントラもアート集も揃えよう、といって出したら“私的複製”が横行して元取れませんでした、とか。それがずっと続いたら、「業界が衰退する」という言葉も想像しやすくなりませんでしょうかね…。

今回の訴訟でさ、作家さん方のことを「金の亡者」だとか批判するコメントもたくさんみたけど、むしろあの方々は「別に」って思ってると思いますよ。たいへんなのはコピー時代に生まれた後続の人達だと思う。

とはいえ、
私はコピーガードガチガチになればいいって思ってるわけじゃないですよ。人によって最適な楽しみ方があるし、買ってくれた人が自由に、読みやすいようにできるべきです。「自分が書込みをした、この書籍をデータ保存したいのだ」という欲求もあるでしょうし、「同じ内容を電子データにして先に販売してれば」解決するものでもないと思う。

一番言いたいのは、何よりお客さんの自由のために、スキャン代行業者と、出版社や著作者は歩みよりをしなくちゃいけないんじゃないかと。なにかしらの制限のもと、お客さんのほうでも安心して頼める業者を作らなくちゃいけないんじゃないかと思うわけです。
出版社がスキャン代行業者を立てたっていいと思う。家電リサイクルじゃないけど、版元自らデータにするよ!とかいう商売を始めたっていいじゃないですか。
または、スキャン代行業者さんはタイトル別に“上納金”みたいなものを納める仕組みをつくるとか。イラストの二次使用なんかは一般的に別途料金が請求されますが、そんな感じ。
その意味では、今回は「いきなり訴訟?」と思わなくもない。

電子書籍化は時代の流れだと思いますし、twitterで何度か書いてるけど「紙の本が手に持てない」人だっているんです。身体的な都合で、iPadを指でなぞるほうが楽なのだと。友人はこれを「知のバリアフリー化」と言ってますが、そうしたことをね、妨げる権利は、著作者にも出版社にもないはずです。

判決がどうなるか分からないけど、どうにかして歩みよって欲しいなあ、と思いますね。